私の代わりに

今まで歩んできた奇跡を綴るだけのブログ

懐に入ってきて、全部奪われてしまった話。

数年前の出来事。

 

5年ほど付き合っていた男性が会社内での異動以降、鬱になった。

週末は私の家に来ることが多かった彼は、1日中苦しそうにもがきながら、ベッドから出てこなくなってしまった。

私は支えなければと思う一心で、彼の様子を日々心配し、病院を探して一緒に通院をしていた。

けれど、私のその行為は彼に対して負担しか与えられなかったようだった。

年末、私が帰省し実家に戻ったことを確認したところで、別れたいというメールがきた。何度も電話したが出てもらえず、結局5年の時間は一方的なメールで終止符を打ってしまった。

 

大晦日、毎年恒例で仲間で集まりわいわいと話していたが、私はどうしても上の空だった。そんなときに最近仲良くなった女性から「心配だし、今からそっちに行こうか」と言われた。

地元はJRで1時間半かかる、遠い場所だ。けれど私はその言葉がとても嬉しくて、来てくれるなら来てほしい、と答えた。

彼女はきた。そして優しく大丈夫だと何度も声を掛けてくれた。私の実家には泊めてあげることができなかった為、彼女と町中の安いビジネスホテル一泊した。

なんとなく、身体の関係になってしまう気がしていた。

 

彼女はセックスした後、好きだよ、と呟いた。

けれど私のポリシーとして、誰とも付き合わないと決めている。抱える、守ってあげなきゃいけない人がもう一人いて、その子もささえなきゃいけないから、と。

私はこの人のことは好きにならないだろうし、そのくらい淡泊なほうが今の憔悴しきった心には居心地が良かった。

 

自分の家に帰ってくると、何度も泊まっていきなよというお誘いがあった。泊まりに行くとなんでも準備していてくれ、ごはんも美味しいものを沢山作ってくれた。このままいたらいいじゃんという甘い言葉に、私は変に気を許してしまった。心があったかくなった。この人は私を必要としてくれているんじゃないかと。

けれど、弱った自分の判断力なんて決して信じちゃいけなかった。

 

夜、私に腕枕をして「愛してる」とつぶやく彼女。

けれどその数分後に携帯の着信音が鳴る。その音は電話してきている人だけ特別に設定している音楽。

慌てるように彼女が出て話ながら、バタバタと身支度を整えていく。そして電話を切ると私に向って「ちょっと様子がおかしいから、あの子のところに行ってくる」

 

そして明け方まで帰ってこないのだ。

わたしはこの環境に、自分はいったい何をしているんだと悔しくなった。結局依存してしまっていたのは私だったのだ。

彼女にこの気持ちを言ってしまえば「だって付き合ってないでしょ。けど大切だし愛しているのは本当だから、なるべく守ってあげたいの」と答えるだろう。言わなくてもそのようなニュアンスの台詞を何度も吐かれていた私には予想がついていた。

 

「もっといい女になれるよ」

「他のところにいっちゃうのはさみしい」

「自分をいちばんにして」

「○○ちゃんとかすごく良いと思うよ、付き合ってみたらいいのに」

「あなたも大事だけど、私にはもう一人いるから。その子の方が重傷だから、どうしてもその子から連絡が来たらいかなきゃならない」

身体をベタベタ触り、私の顔を見て好きだと言う。愛しているとも何度も言う。そばにいてくれて幸せだとぼやく。そのくせに酷い言葉で突き放す。

もう限界だった。私の依存しているこの状況を変えない限り、いいように扱われることもわかっていた。

 

必死の思いで半年間、彼女とのかかわりを徐々に疎遠にしていった。

その途中、目をかけていたもう一人の女の子は忽然と飛んだらしい。連絡先をブロックされて、何もできなくなったと。

彼女は頭が良いと思った。見切りをつけるのが私よりはるかに速かった。

 

するとなるべく会わない様にと疎遠活動をしていた私に張り付くようになり、挙句の果てには「あなたとなら付き合っていけると思うんだ。付き合おうよ」と言った。

最低だと思った、けれど流されそうになっている自分も最低だと思った。

 

なんとか気持ちをこらえて、付き合う気持ちはない、と突き返した。

 

一週間後、彼女ができたという報告がきた。

それと同時に「あなたはもっといい女になれるんだから、はやく幸せ見つけなよ」とも言われた。

他人行儀のその言葉が、私をどれほどまでに傷つけたのか、彼女は知る由もないだろう。

あなたが出来なかったことを、けれど私のすべてを知っているという呈で押し付けないでほしかった。あなたの駒じゃない。あなたのせいで、さらに人間と言うものを嫌いにさせられた。

 

今だ癒えない深い傷。

 

そしていまだに、周りの友人を使って私の近況を聞き出している。「付き合ってもよかったんだけど、そこまで至らなかったんだよね」というとんでもないポジティブな一言を合わせて、今日も誰かに吹聴しているのだろう。

 

こんな思いをするくらいなら、どれほど弱っていても、他人には見せてはいけないのだ。